Vol.05EV急速充電器導入事例
大和リースが急速充電器設置で担う、 地域インフラとしての役割
大和リース株式会社 流通建築リース事業部 SC運営部 部長/福来俊也様

今回のインタビュー先

今回のインタビュー先

2024年7月現在、全国34カ所の商業施設に急速充電器を設置している 大和リース。同社が急速充電器を設置している背景には、創業者より受け継いだ「公の精神」があるといいます。今回はe-Mobility Powerと共に 充電器の設置プロジェクトを担当する大和リース株式会社流通建築リース事業部の福来俊也様に、充電器設置にまつわるお話を伺いました。

30分の充電時間が滞在時間とマッチ、相性の良さを実感

―まず、商業施設に急速充電器を導入された経緯について教えてください。

弊社が最初に急速充電器を設置したのは2016年です。環境政策に本腰を入れていこうという機運が社会的に高まり、EVの普及や充電インフラの整備が叫ばれ出した頃でした。経済産業省の補助金を活用して充電器を設置できると伺い、弊社でも設置をしてみようということになりました。

―設置する店舗はどのように決めたのでしょうか?

弊社では、「規格建築事業」「流通建築リース事業」「リーシング ソリューション事業」
「環境緑化事業」の4つを柱として事業を行っています。
私が所属する流通建築リース事業部では、「フレスポ」や「BiVi」、「ブランチ」という施設ブランドを中心に全国170カ所以上で商業施設を運営しており、その中でも特に駐車場台数や売上規模の大きな施設を選びました。

―当時はまだ現在ほどEVが普及していませんでしたが、どれぐらいの利用があったのでしょうか?

施設によって差はありますが、多いところで月間100回以上の実績がありました。仰る通り、まだEVユーザーが多いとは言えない時期でしたので、利用者も少ないのではと考えていました。しかし、実際は想定していたよりも利用回数が多く、思った以上に急速充電器の利用ニーズがあることを実感しました。

―導入に際し、現場からはどのような反応がありましたか?

施設に出店いただいているテナント様からは、「充電器が設置されることによって、環境に貢献しているという印象を持っていただける」とポジティブなご意見を頂戴しています。また、お客様からは「ぜひ他の店舗にも充電器を設置してほしい」というご要望をいただいているようです。全体として、非常にプラスなイメージで捉えられていますね。

―急速充電器と貴社の商業施設との相性はどうですか?

弊社が開発・運営する商業施設は基本的に小商圏型です。広域から多くのお客様を呼び込む施設ではなく、近隣のお客様に週に数回来ていただくようなネイバーフッド型ショッピングセンターという形態を中心としています。核となるテナントはスーパーマーケットやホームセンター、ドラッグストアなどで、お客様の滞在時間は30分から1時間程度です。急速充電の一回あたり充電時間の上限である30分という利用時間ともマッチしており、非常に相性がいいと感じています。

「公の精神」で、地域や社会・環境課題に取り組む

―2024年7月現在、全国34カ所の商業施設に急速充電器を設置いただいています。現在も設置基数を増やされている理由について伺えますか?

大和ハウスグループの根底にあるのは、創業者より受け継いだ「公の精神」です。我々、流通建築リース事業部においては、「商業施設の開発や運営を通して地域にどう貢献していくのか」を常に考えながら事業に取り組んでいます。急速充電器の設置もその施策のひとつと考え、積極的に進めています。

―先ほどの「公の精神」に通じる活動になるかと思いますが、令和6年能登半島地震の際には充電器の無償解放をされたと伺いました。

e-Mobility Powerさんからご提案をいただき、フレスポ小松に設置していた急速充電器を無償で解放しました。また、弊社の規格建築事業部では、仮設建物やプレハブのリースを行っており、応急仮設住宅の建設にも協力しています。東日本大震災の際も、コンビニエンスストアの応急仮設店舗の建設や津波の被害に遭われた街の再生に携わりました。 災害時には、生きていくためにどうするのか。暮らしていくためにどうするのか。長く住み続けるためにどうするのか。「緊急」「応急」「復興」の3段階があると考え、被災者の方が一日も早く日常を取り戻せるよう、それぞれのフェーズに合わせた支援を行っています。

地域のみなさまに愛される施設づくりを目指して

フレスポ小田原シティーモール(神奈川県小田原市)の急速充電スポット

―ここまでのお話で、貴社が集客のみを考えて急速充電器の設置をしているわけではないということがよくわかりました。

我々は、商業施設を地域のインフラと位置付け、充電器の設置を行っています。20年ほど前まで、商業施設は単に買い物をする場所でした。しかし、ネット通販が当たり前となった今、それだけでは事業として成り立ちません。どうしたらお客さまが買い物以外のきっかけで来てくださるのか。
どうしたらファンになっていただけるのか。そのようなことを考える文脈の中に地域貢献・社会貢献があり、それがやがては集客にもつながっていくと信じています。

―最後に、今後の展望を聞かせてください。

弊社が新たにオープンする複合型商業施設には、可能な限り急速充電器を設置していく方針です。また、オープンしてから20年以上が経ち、リニューアルのタイミングを迎える店舗にも設置を検討しています。今後も必要な場所に必要とされるものを設置していくことを通じて、地域のみなさまに愛される施設づくりを目指してまいります。